Bashのファイル記述子255について

Fri Nov 3 18:20:48 JST 2023 (modified: Fri Nov 3 18:41:07 JST 2023)
views: 3875, keywords:自作シェル, bash, 連載 この記事は最終更新日が1年以上前のものです。

 連載「魅惑の自作シェルの世界」のための調べものをしていて、以前から気になってた「BashのFD255」について真面目に調べました。なんのことかというと、これのことです。

$ ls -l /proc/$$/fd
   合計 0
   lrwx------ 1 ueda ueda 64 11月  3 13:55 0 -> /dev/pts/1
   lrwx------ 1 ueda ueda 64 11月  3 13:55 1 -> /dev/pts/1
   lrwx------ 1 ueda ueda 64 11月  3 13:55 2 -> /dev/pts/1
   lrwx------ 1 ueda ueda 64 11月  3 13:55 255 -> /dev/pts/1 #これは何?

標準入出力のファイル記述子(FD)0, 1, 2番が端末につながっているのは分かりますが、255番がいるのはなんなのかと。

しらべた結果

 このページにたどりつきました。全部書いてありました。読めば書いてあるんですが、「Bashがインタラクティブシェルとして使われているときに、標準エラー出力がリダイレクトされたときのユーザーとの通信用」とのことです。

 実はこのページ、最初から255の謎を調べていたわけではなく、「端末とつながっているファイル記述子を、なんでもいいからひとつズボラに探す方法」を探していてついでに発見したものです。確かに255がそういうものなら、255は端末につながっているとして良さそうです。ユーザーが変なリダイレクトをしなければ、という話ですが。やるなよ!絶対やるなよ!

ということで変な操作をしてみる

 シェルでexec 255>&-を打つと255を閉じることができるので、実験してみましょう。

コマンドにフォアグラウンドを渡さない

 まず、execの前に、次のようにpsを打ってみます。

$ ps au --forest
   USER         PID %CPU %MEM    VSZ   RSS TTY      STAT START   TIME COMMAND
   ・・・
   ueda      210157  0.0  0.0  12828  5440 pts/3    Ss   15:02   0:00 bash
   ueda      218236  0.0  0.0  13716  3360 pts/3    R+   18:11   0:00  \_ ps au --forest
   ・・・

psのSTATの項目に+がつきますが、これはpsがフォアグラウンド(端末とむすびついている)という印です。

 ここで、execして255を閉じてしまいます。

$ exec 255>&-
   $ ls -l /proc/$$/fd
   合計 0
   lrwx------ 1 ueda ueda 64 11月  3 13:55 0 -> /dev/pts/3
   lrwx------ 1 ueda ueda 64 11月  3 13:55 1 -> /dev/pts/3
   lrwx------ 1 ueda ueda 64 11月  3 13:55 2 -> /dev/pts/3

これで再びpsを実行すると・・・

$ ps au --forest
   ・・・
   USER         PID %CPU %MEM    VSZ   RSS TTY      STAT START   TIME COMMAND
   ueda      210157  0.0  0.0  12828  5440 pts/3    Ss+  15:02   0:00 bash
   ueda      218270  0.0  0.0  13716  3360 pts/3    R    18:13   0:00  \_ ps au --forest
   ・・・

というように、シェルのほうがフォアグラウンドのままになります。ちゃんとBashのコードを読んでいませんが、Bashが端末につながっているかどうかを255で確認しているのだと思います。

コマンドに画面を渡さない

 上記の挙動は普通のコマンドだとあまり問題になりませんが、画面を占拠するようなコマンドがエラーを出すようになります。

$ top
   bash: [210157: 1 (255)] tcsetattr: 不正なファイル記述子です
   
   [1]+  停止                  top
   $ vi
   bash: [210157: 1 (255)] tcsetattr: 不正なファイル記述子です
   
   [2]+  停止                  vi
   $ jobs
   [1]-  停止                  top
   [2]+  停止                  vi
   $ exit #たぶんexitすると消えてくれます。(ゾンビになってたらごめんなさい)

Bashを固める

 また、こういう遊びもできます(どうしてこうなるかは解析していません)。

$ stty tostop
   $ exec 255&>-
   (固まる)

試した環境

 次のとおりです。

$ echo $BASH_VERSION
   5.1.16(1)-release
   $ cat /etc/lsb-release
   DISTRIB_ID=Ubuntu
   DISTRIB_RELEASE=22.04
   DISTRIB_CODENAME=jammy
   DISTRIB_DESCRIPTION="Ubuntu 22.04.3 LTS"

現場からは以上です。シェルを壊すのはたのしいです。

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