2025年の生産物

Sun Dec 21 11:14:59 JST 2025 (modified: Sun Dec 21 17:32:11 JST 2025)
views: 699, keywords:振り返り

 講義が一段落して年末年始でまた何か始めたい(いろいろプランあり)という状況なんですが、たぶん今年作ったもの一覧を書いておかないとやり散らかしになるので振り返ってみました。念のために書いておくと、睡眠はたっぷりとっております。無駄な会議がないのは大学、学科の皆様のおかげです。

ロボット学会のセミナーの物騒なスライド

 昨年のロボット学会学術講演会でのROS 2に関するブチギレ発表に次いで、2年連続でブチギレ発表をしました。研究者は研究発表をしなければという自身の思いとは裏腹にそういうキャラクターに成り果てていて涙も枯れ果てました。

ソフトウェアデザインの連載(26回〜37回)

 2022年12月から始まった「魅惑の自作シェルの世界」が今年も打ち切りにならず続いてます。シェル芸で各回のタイトルを抜き出すとこんな感じです。コマンドの引数、関数、変数についてひたすら実装を進めていたようです(覚えてない)。

🍣 head -n 3 2025*/2025??.md | grep "^第" | sed 's/^/* /'
   * 第26回: 変数の置換とチルダ展開
   * 第27回: 単語の分割
   * 第28回: パス名展開(前編)
   * 第29回: パス名展開(中編)
   * 第30回: パス名展開(後編)
   * 第31回: コマンド置換
   * 第32回: ダブルクォートによるクォート
   * 第33回: 関数の実装(前半)
   * 第34回: 関数の実装(後半)
   * 第35回: 代入の実装
   * 第36回: 代入とコマンドの組み合わせ
   * 第37回: `local`の実装(前編)

 裏の話をすると、今年前半は原稿のストックが数ヶ月分あったのですが、あとで書くように忙しくなったので最後の数回は結構大変でした。それでも締め切り10日前には書けてましたが。正月も少し書き進めておこうと思います。

寿司シェル

 連載のもとになっている自作シェルの実装については、今年はこんなことがありました。

  • bash-completionが動くようになって十分実用に耐えうるようになり、自分でもBashから乗り換えることに成功
  • 国内外からプルリクエストが来るようになった(けど対応があんまりよくないかも)
    • 対応があんまり・・・というのは、すごくたくさん提案してくれる方が現れたんですが、こちらはマイペースでやってるのであんまり時間をかけて議論ができないうちに疎遠になってしまったということがありました。
  • Bashとの互換性のテストを導入して進捗をグラフにして自分にプレッシャーをかける。
    • 後半、グラフの線が水平になって開発が止まってる理由はこのあとの項目を読めば分かります。

 今後については・・・どうしましょう?LLMと繋げてみます?

画像処理(と言いつつ人工ニューラルネットワーク)の講義資料

 本年度は急遽、大学院の画像処理の講義を追加で受け持つことになりました。後期の講義で5月ごろに担当が決まったので、すぐに構成をどうするか考え始めたんですが、今はVLM(vision-language model)の時代なので、思い切って全編人工ニューラルネットワークだけで構成してみました(3D Gaussian splattingを除く)。といっても自分はここらへんの経験がないので、文献を読みまくって勉強しながらだったので、今年一番時間をかけた仕事になりました。

 講義資料を書くにあたって、論文だけだと難しいのでいろんな本も参考にさせていただきました。全然意識はなかったのですが、ド定番である「ゼロから作るDeep Learning(オライリー, 斎藤康毅)」以外は、連載でもお世話になってる技術評論社さんの本ばっかりになりました。力を入れてるんだろうなと。(自分もいつかVLAでなんか書けるように頑張ろう・・・)

VLA関係のものは論文を読むだけで済んだので、河原塚先生、松嶋先生の本(講談社)はこれから読みます(ごめんなさい)。洋書も何冊か買ったんですけど、格調高すぎてそれなら論文読んだほうがいいかなーという感じでした。本も論文も書く身としては、本はやっぱり読む人に寄り添ってナンボだと思います。

確率ロボティクスの講義資料

 こっちは毎年やっている講義ですが、灰色の本に基づいた内容に刷新すると決めてシラバスにも書いてしまったので、こちらも新たに資料を作り直しました。作り直しているときに↑の話になったので、もう今年は研究無理だと腹をくくりましたが、学生さんのおかげでなんとかなってます。

 なんで内容変えたかというと、これもVLA時代なので、もうちょっと基礎を重視して、かつ機械学習寄りにしたかったというのがあります。ただ、マルコフ決定過程や強化学習の分量が減ってしまったので、来年度はどうしようかなと悩み中です。

確率ロボティクスの講義動画

 これも画像処理の講義の関係で中断しているのですが、今年前半は確率ロボティクスの講義動画も撮っていました。いま第3回(灰色の本の3章)まで撮ってあるので、そのうち再開します。

シェル芸勉強会

 これも画像処理の講義の関係で止まっちゃいましたが(どんだけ影響出てるんだ・・・)、今年はシェル芸勉強会を2回やりました。これも来春復活で。

機械学習の講義

 実はもう1件、前期に新規の講義をやってました。他大の非常勤講師で機械学習がテーマでした。この資料を先述の2つの講義に転用できたので、多少負荷が減りました。結果オーライで・・・。ニューラルネットワークのところはリサーチが足りないです。

横幹連合での発表

 結局、講義の関係で学会にもほとんど行ってないんですが、1件だけ、自分で発表がありました。昨年出版された「イノベーションの創出」本の関係の発表で、第3章の著者として発表してきました。予稿も書きましたが、「本の通りです」と書くしかなく、あとは愚痴みたいなものを書いて大変申し訳ございませんでした。あと、ついでに実家に寄りました(SIのあった広島から直行)。

学生さんの学会発表・予稿

 学生さんの成果は学生さん自身のものですが、協力して世に出しているので書いておきます。いつもは年度でリスト化してますが、ここでは2025年というくくりで。林原先生が共著の4件は口出しだけでちゃんと添削できなかったので反省です。他のものについては添削しつこすぎて反省。

 あと特筆事項はニューラルネットのが5件、確率ロボティクスのが4件ですね。ここ数年、こういう割合です。

  • 髙澤怜里, 上田隆一, 山野辺夏樹, 藤井浩光: 編み物における技能理解のためのLSTMによる手先動作の解析, 第30回ロボティクスシンポジア講演論文集, pp.173-178, 2025.
  • 吉越 誠, 林原 靖男, 上田 隆一: 移動ロボットのための彷徨しながらの衛星測位によるLiDARベースの自己位置推定の破綻からの復帰法とナビゲーションの継続, 第30回ロボティクスシンポジア講演論文集, pp.107-112, 2025.
  • 石黒巧, 佐藤蓮, 上田隆一, 林原靖男: 視覚と行動のend-to-end学習により経路追従行動を 模倣する手法の提案 ―シナリオ駆動型ナビゲーションのための 学習フレームワークの構築と検証―, JSME ROBOMECH, 2A1-P05, 2025.
  • 髙橋聖空, 坪内優輝, 上田隆一, 林原 靖男: 視覚と行動のend-to-end 学習により経路追従行動をオンラインで模倣する手法の提案 ―未知障害物回避行動の分析と実環境適用に向けた検討―, JSME ROBOMECH, 2A2-R01, 2025.
  • 船井涼, 林原靖男, 上田隆一: 移動ロボットのためのベクトル量子化による占有格子地図の圧縮と圧縮したままの地図を利用した自己位置推定, 第43回日本ロボット学会学術講演会, RSJ2025AC3Q3-08, 2025.
  • 中村啓太郎, 林原靖男, 上田隆一: 自律移動ロボットのための価値反復とA*探索を組み合わせた大域経路計画 ---探索空間を3次元に拡張したAとの組み合わせの検討, 第43回日本ロボット学会学術講演会, RSJ2025AC3Q3-06, 2025.
  • 今井悠月, 上田隆一, 林原靖男: 視覚と行動のend-to-end 学習による経路追従行動の模倣 ―教師データの自己情報量に基づく重みづけ学習手法の提案―, 第26回SICE SI, pp.1875-1880, 2025.
  • 馬場琉生, 上田隆一, 林原靖男: 物体追跡導入によるリアルタイム・ゼロショットセグメンテーション —自律走行モビリティにおける認識・判断タスクへの応用—, 第26回SICE SI, pp.1033-1037, 2025.
  • 佐々木新平, 吉越誠, 林原靖男, 上田隆一: 自律移動ロボットの自己位置推定におけるVisual Positioning Systemを用いたリセット手法, 第26回SICE SI, pp.1674-1676, 2025.

歩いてるオッサンの動きの予測

 1月ごろはまだ自分でも研究していて、2024年12月の学会(SI2024)で発表した、ロボットのまわりの動いてるものの動きを予測するアルゴリズムを改良していました。細かい話は抜きでデモ動画を置いときます。シミュレータのオッサンがロボットを蹴ってしまうので、ロボットは床にくくりつけました。たぶんオッサン痛いと思います。

 この研究、いまは学生さんに丸投げしています。その学生さんが動いているロボットで動作させるという難しい課題に取り組んでいます。そのうち発表できるといいなあと。

この動画でもオッサンがロボットを蹴ってて、ロボットが吹っ飛んでます。

まだ出てないけど頑張ったやつ

投稿論文(通ったけど世に出ない)

 筆頭著者の研究を自分がまとめてロボット学会誌に1本論文が通ったんですが、「他のが溜まってるから掲載待って」と言われてて待ってます。2026年に持ち越しです。

書きかけの本

 ふふふ・・・

現場からは以上です。正直あんまりアクティブじゃない1年だなと思って過ごしていたんですが、結果としてたくさんなにか作ってました。振り返るの大事です。来年もがんばるぞ。

ノート   このエントリーをはてなブックマークに追加 
 

prev:12月2日にRSJセミナーに登壇するとか自作シェルの連載4年目突入とか next:2025年の生産物

やり散らかし一覧

記事いろいろ