確率ロボティクス復刊。ドサクサに紛れて昔話4(売り切れと、関係ないけど失踪と)

Mon Mar 16 09:54:33 JST 2015 (modified: Sat Sep 30 16:15:34 JST 2017)
views: 1402, keywords:執筆,独白,研究,確率ロボティクス,赤裸々な この記事は最終更新日が6年以上前のものです。

また昨日に引き続き、確率ロボティクス復刊記念、自意識過剰独白です。

確率ロボティクスは確か半年くらいかかって初版が売り切れました。値段や学術書であることを考えると売れた方でした。しかし、ご存知の通り増刷はありませんでした。なぜかというのはこの時が2008年だということを考えて理解する必要があります。私が知った内側の話はしませんが、マイコミさんは外から見てるとウェブの方に舵を切っている最中でした。会社の名前もその後マイナビになったということは、まあ、そういうことです。リーマンショックも・・・もしかしたら関係していたかもしれません。

私からはそんなこと言わず刷ってちょうだいとお願いはしたのですが、二日前に書いたように本の値段とのトレードオフがあり、そういうことは覚悟してたので、それ以上は食い下がりませんでした。それに、私も原著を読んだわけですから、翻訳版はちょっと出回ってるくらいがよくて、みんなそれを◯◯◯して手元に持っておいて、それを参考に原著を読んでくれと考えていました。現在は、やはり母国語で学問できるという幸せな国にいるのだから、翻訳というのは大切な作業だと思っています。しかし、当時は私も海外志向で「英語読め」と心のどこかで突き放していました。ちと行動と矛盾してますが。

んで、あまり本とは関係ありませんが、この頃にはもう完全に研究者をやめるつもりでいました。論文の本数がーーーとかインパクトファクターがーーーパーマネントのポストがーーーとか周囲が騒がしくなり、私のようにもっと早い段階で選抜されて「研究だけが先生の仕事ではない」というOJTを受けてしまった人には居心地が悪くなったので、一度退場しようと思ったのです。学生には常日頃、「組織に頼る生き方はするな」と言っていたので、今度は自分でそれを体現するべく、またペーペーからやり直そうと思いました。起業くらいしろよというところですが、商売の世界に人脈もなく、体もボロボロだったので、人の人生を預かるような仕事は避けました。プログラミングとライティングには自信があったので、漠然と、最終的には一人で仕事ができるようにライターになれればいいなと考えていました。そのためには現場で修行をしなければなりませんし、そのコミュニティーで人脈も築かなければなりません。

それから、「Amazonの書評を鵜呑みにした」ベテラン企業研究者Hさんと某学会で一緒になったので相談をしたところ、「違う分野でまたトップに踊り出る自信があるなら辞めなさい」と言われました。そのとき「はいできます」と即答できてしまったので、踏ん切りがつきました(笑)。スラン先生には「俺やめます」と一筆書いてそれっきりです。

幸い、ひょんなことから慶応大学の大岩先生に身柄をお預けすることになり、「なるべく小さい会社」「なるべく面白い会社」とこちらの希望をお伝えしたところ、USP研究所を紹介していただきました。そして、大学にいるうちからちょくちょく遊びに行き、そのまま就職しました。あと、某G社だけは大きいけど面白そうだったので突撃してみましたが、落ちたことをちゃんと書いておきます。ああ恥ずかしい。あと、やめると決めてもちょっと未練もあり、KO大とTK大には一応准教授で応募しましたが門前払いでした。

辞めたのは本に関係する理由もほんの少しあります。このまま「確率ロボティクスの先生」となってしまうことに居心地の悪さを感じていました。私は単に翻訳をしただけで、自分で実装した経験のあるものは本の中のごく一部のものだけです。それに、新しいことをやるときに昔の話に引き戻されるのもなんだかなと考えていました。もう、翻訳は過去の話になっていました。

もし自分が今更になって確率ロボティクスであちこちで話をしているとしたら、それは私が研究をストップして、ボロボロな状態で翻訳をやったことが全く報われなかったということなので、とても辛いものがあります。たぶん、そんなことはないはずです。現時点での私は、その分野の研究者としては完全に初心者だと考えていますし、今もトップを走っている先生がたもそう考えていると思います。学問っていうのは論文や書物でバトンリレーをしているようなもので、一度止まった人間は、一旦そこで終わりです。学問の進歩が7, 8年もストップしてる訳はないので、周囲の方も冷静に考えていただきたく。(とは言いつつ断れる身分でもないので呼ばれたら喋ってますが。)

30歳の時の話です。

おしまい。本当は夜に書こうと思ったのですが、いろんな思いが去来して、午前中に書いてしまいました。仕事します。

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